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にしおゆきさんの陶人形

8冊目となる今回の分室カタログのテーマは、『猫』です。
前回のテーマが『裸』だったので、今度は『猫』で挽回しようという魂胆かといぶかる方もいらっしゃるかと思いますが。
たしかに、世の中は空前の猫ブームなのだそうで、どこへ行っても猫グッズ売場は目につくわけで、それに比べて裸を売りものにするのは、なんだかやっぱり後ろめたい気分になってくるのか、店頭に裸をバーンと並べて売ってみたいと言う雑貨屋さんは現れてくれませんでした。
毎日猫をながめて暮らしたい人がいるならば、同じくらいに毎日裸をながめて暮らしたい人もいるはずだけどなあ。
販売元としての私たちにとっては、猫の作品も裸の作品も商品であることには変わりなくて、誰かが、私たちの売りものの中に好きなものを見つけてくださることは、とても嬉しいことです。
にしおゆきさんに裸の人形を作ってもらったのも、ふだんは隠してらっしゃるどきっとするような裸を見せてほしかったからだし、それを多くの人に見てほしかったから。
基本、年に数回開催される個展でのみ作品を発表するにしおさんから、こんな話を聞きました。
「個展の時はいつでも、見せて、売って、さようなら。それがいちばん好きなスタイルだったし、それ以外は考えられなかったのに、最近は、自分の手元から誰か一人の人のところへ行くだけの、その一本道を少し切なく思ってしまいます。」
それは、二十年間の創作活動で初めて芽生えた、自身でも戸惑うような感覚ではありましたが、決して作品を手放したくないという意味ではありません。
「自分たちは売りものだけど、その前に、誰のものでもない、皆が共有できる『おはなし』みたいなものですよ。」と、人形たちのつぶやきが聞こえる気がしてきたのだそうです。
にしおさんが人形の姿を借りながら作り続け、誰かのもとへ届け続けてきたものは、本人の知らない間に、たくさんの人々の心へ伝わり始まっているはずです。
ですから勝手ながら、私たちの作るカタログも、誰かにとっての『おはなし』になれたらいいねぇと思ったりもするのです。
ところで、にしおさんの代表作品である『トルソ』には、猫だとかいろんなものが頭に乗っています。
これは、頭に猫を乗せている『人』を作っているのではなくて、頭に猫を乗せた人のかたちが、『て、いうおはなし』を表しているのだそうです。
「私は『人』を売るのはしんどいし、お客さんも『人』を買うのはもっとしんどいでしょ?」
でも、猫を乗せると、パンを乗せると、リンゴを乗せると、人じゃなくて、『て、いうおはなし』を売っていることになるという理屈です。
だからお客さんも怖くないし、にしおさんも怖くない。これはなるほど大発明と言うべきですね。
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